<7月16日>
零時過ぎ、小淵沢インターチェンジを降りたすぐのコンビニの駐車場で運転席のシートを倒して寝る。
5時半にやまのこ村の駐車場に停める。計画では18日下山にしていたので、駐車料金は3日分3000円。
赤岳鉱泉8時着。登攀に不要な荷物をボストンバッグに入れ、赤岳鉱泉小屋の隅にこっそりデポさせてもらう。
天気はあまり良くない。予報では夕方から雨。時間は十分ある。
大同心取り付きには11時着。案の定持病が出て、足は上がらないが息が上がり、2時間のコースを3時間もかかってしまった。
壁の手前の分岐を左に歩いた突き当りが雲稜ルートの取り付き。青いスリングが、V字に、ボルトハンガーに取り付けられている。壁はところどころ被っている。溶岩に半分埋まったような10~40cmくらいの石のガバホールドが豊富にある。
1P目、10mほど上の白いスリングを目指し、登る。その上のかぶり気味のところA0を使ってしまう。後は何とかこなす。
2P目、V字に窪んだ岩でホールドが見当たらず、A0を使ってしまう。
3P目、崩れそうな岩をだましだまし登る。途中、晴れ間がのぞき、気温も上がって暑さを感じるほどとなる。

懸垂後登り返して3P終了点に着いた時、まだ午後2時だったが雨が降り始める。早すぎるが、どうも回復する気配はない。急いで合羽のジャケットだけ着て下降。2P目終了点で、懸垂用に持ってきた50mの細引きがウンともスンとも動かない。登り返す羽目となる。
そのまま2P懸垂を続け、1P目の終了点に見覚えのあるカラビナが2枚、回収し忘れていたのを発見、回収する。
雨足は強くなり、古い合羽はシームがはがれて水が漏れ、体が濡れてくる。適当にロープ、登攀具をリュックに詰め込み、下降を開始するが、雨で泥状になった下降路は、滑りまくって何度かしりもちを着く。赤岳鉱泉に到着したのは17時過ぎ。体は雨でぐちゃぐちゃになっていた。
デポを屋根の下に置いておいてよかった。なんとかテントを設営し、もぐりこむ。食欲が湧かない。適当に水分を取って寝る。荷物はことごとく水に濡れ、不快極まりない。零時前に一度起きたが、雨は止む気配がない。スマホは圏外で天気が確かめられない。来る前に確認したところでは、明日は晴れだったが、これでは明日下山だな。そう思いつつ再び寝る。
<7月17日>
5時前起床。外は明るい。テントから顔を出すと晴れ間がのぞいている。いつの間にか雨は止んでいた。
6時に出発。しかし、ルート図がテントの中で行方不明となってしまった。まあ、適当に登ろう、とお気楽に構える。
30分ほどで中山乗越。そこから稜線に向かって登る。道がところどころわかりにくいが、樹林帯を抜けたところで岩稜帯が出現する。真新しいボルトハンガーで確保をとり、直上のボルトは無視して、右のボルトでランナーをとり、登る。20mほど登ったところに確保支点があるが、これでランナーを取り、左の草付きに入り、そこから直上して、スリングが残置されたダケカンバの枝で確保をとる。ガスが湧いてきて雨が降り出す。やれやれ、今日も敗退だろうか。念のためスマホで天気予報を確認する。赤岳鉱泉では圏外だったが、ここでは受信できる。午後から晴れとある。まだ8時過ぎだったが、これ以上天気は悪くならないだろう、と踏んで登攀を続行する。
ロープを畳んで、しばらく踏み跡を歩く。ところどころ手を使って攀じる。さほど難しくないが、ロープが昨日の雨を吸ったせいか、背中のリュックが重く、バランスを取るのに苦労する。
再び岩稜が出てくる。ロープを出し、登攀に入る。ホールドは豊富で難しくない。直上した後、凹状から左のカンテに移り、そのまま這い上がる。20mほどで岩稜が尽き、踏み跡の明瞭な草付きに入る。確保支点を求めてしばらく歩くと、前方の岩にスリングのかかったボルトハンガーを発見する。

そこから再び歩きとなる。しばらく行くと前方に三度岩稜帯が現れる。真正面の岩はボルトもなく、とても登れそうにない。右下に踏み跡があるが、上部のなだらかな凹状の草付きに抜けるルートが見当たらない。と思ったが、よく観察すると、凹状の草付き左下の被った壁に微妙なトラバースルートがある。ボルトが打たれているが、ロープなしでも登れそうである。
そこを慎重に登り、凹状を詰めると頂上らしきものに出た。まだこの先があるのだろうか。靴を履き替えようとしたが、前方に鋭いピナクルがあり、クライミングシューズのまま前方の岩を降ると、人が歩いているのが見えた。驚いて思わす、「そこ縦走路ですか?」と声を掛けた。その人は、「そうです! こちらが赤岳です!」と私から見て右後ろ方面を指さす。見ると立派な縦走路を、何人も人が歩いている。どおりで、さっきから人声が聞こえていたはずだ。時刻は11時。で登ったのは本当に中山尾根だったのか。ロープは2回しか出していない。
靴を履き替え、地蔵の頭には12時。行者小屋12時40分。赤岳鉱泉帰着は13時半。
さてどうしようかと迷ったが、大体やることは終わったし、温泉の誘惑が断ち難かったので、下山を決める。
やまのこ村駐車場にたどり着いたのは、16時半。お店に1日早く下りたことを伝えると、1000円返金してくれた。
※帰宅後、冬期クライミング(白山書房)で中山尾根の冬のトポを確認したところ、最後の岩稜帯(上部岩稜帯)以外はほぼ私の記述通りでした。上部岩稜帯は、多分、夏と冬では状態が異なるのでしょう。