雪彦山地蔵岳東稜

 雪彦山は、昔大阪に住んでいたころに何度か登りに行った。久々に大阪に単身赴任で来て、細々と岩登りをしているが、関西でマルチピッチできるところと言えば、大台ケ原の千石嵓かここくらいしかない。五十肩が進行しもうすぐ六十肩になろうかという僕が登れるのはせいぜい3級なので、地蔵岳の東稜に決めた。ここは、今回初めての挑戦だ。昔、不行岳に登った記憶は微かに残っているものの、アプローチがどうだったかなど、ほとんど覚えていない。まあなんとかなるだろう。

 5月2日夜9時出発、途中眠くなってSAで仮眠をとる

右手に地蔵沢
右手に地蔵沢

も、ナビの設定を間違えて変なところを徘徊した挙句、雪彦山登山口手前の駐車場に着いたのは午前1時過ぎ。車の中で寝袋に入り寝る。5時起床。すでにあたりは明るい。コンビニで買った朝飯を食べ5時半に出発。

 右手に沢を見ながら登山道を歩く。道は「出合」と看板のあるところで沢を横断する。ここでに沢に入る。どこかで右岸の沢に入るべきかと思うが、よくわからないまま遡行を続けると、また登山道が沢を横断している。左に行くと地蔵岳、右に行くと下山道と標識がある。少しだけそのまま沢沿いの道を遡行するか、やはりおかしいと思い引き返す。最初に出てきた右岸の枝沢に入り遡行していくと、ガラ場となったところにオレンジ色のヘルメットが落ちている。最近落としたばかりのようで、まだ使えると思い拾う。ガラ場はかなり急で、登ろうとするが、足元が崩れてやばい。一旦降りるが左岸から巻けば行けそうだ。小さなゴルジュに入り進んでいくと、チムニー状に行き当 たり、それを越えたら、大きな鎖が見えた。登山道だった。そのまま道を登ると、すぐに地蔵岳の頂上への分岐があった。頂上から感覚を掴もうと思い、見下ろすもよくわからない。が、登ってきた沢は、目指す不行沢の一本右のようだ。

 再び沢を降り、枝沢がないか確認しようとしたが、下りは左岸を高巻いてしまい、右岸の様子は分からなかった。出合の看板のある登山道に出て、しばらく降り、沢とも尾根とも判別のつかない緩やかな斜面に入りしばらく登ると沢が出てきた。これかな? だんだん急になったところで右手の尾根に登ると、壁らしきものが木々の間から見える。期待して進んだが、出て来たのはフリーをやるには魅力的な前傾壁。開拓の進んだゲレンデだった。

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魅力的な前傾壁

ここが地蔵の正面壁だったら、東稜取り付きはもっと左のはず。引き返し、起伏に富んだ斜面を苦労しながらトラバースしていくと、人声がする。嗚呼、やはり東稜に登りに来たクライマーの声に違いない。それにしてはやけににぎやかだ。はて、と思ったら、また登山道に出た。そこは出雲岩から天井岳に向かう一般道だ。そのまま登り、出雲岩を経て、天井岳で他の家族連れなどの登山者に交じり昼食。さらに地蔵岳を経由して、再び件の登山道を降り、沢を避けて一般ルートを進み3度「出合」の看板を見る。すでに12時を過ぎていた。

 もうアプローチ敗退しかない。せめて、取り付きまでの道を確認して次回に生かそう。登山体系の大雑把な記事と図を見る。沢に入ってすぐ右岸に落ちる沢を遡行せよということかな。

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この左が登り口だった


 果たして、すぐに踏み跡とペンキが出て来て、僕を導いくれる。樹林の間についに壁が出現。しかし、三級のはずなのに初っ鼻が少しかぶっていて難しそうだ。怖いと思ったので携帯で東稜取りつき写真を探ると明らかに違う。やっぱ違う壁か? しかし、少し沢を登って見ると、登山体系にも記載のチョックストーンが見える。その左脇にロープが垂れている。それを掴んで這い上がると、そこが東稜の取り付きだった。
 さて、もう一時過ぎてるし、じゃあ帰ろうかと頭は考えているのに、体が勝手にリュックから登攀具を取り出し、身体につけ始めている。俺何やってんだ、と思いつつ、まあ、何ピッチも登ってビバークした時のことを思えば、これから取りつくのもありかな。夜間登攀だってできないわけではないな。曇っていはいるが、天気持ちそうだし。

荷物をバッグに詰め替え、ロープの端を残置ボルトに固定して、空にしたリュックにもう一端からロープを詰めていく。ガルダーを応用した確保をハーネスにセットして取り付く。ふとヘルメットをかぶってないのに気づいて降りる。そういえば持ってきたヘルメットを見なかった気がする。バッグの中には、さっき拾ったヘルメットしかない。しまった。車に忘れた。しょうがない。手にしたやつを借りることにする。やはり登れということだな。

 さて、取りつきから簡単な三級を登る。改良した確保システムはとりあえず快適。ただ、ガルダーヒッチからロープを引っ張りだす時に、アンカー側とリュック側の両方からロープが出てくるので労力の割に繰り出す量が少ない。そのため、やばそうなところに出てくると多めに繰り出しておこうとなるが、そうすると、墜落距離も伸びることになる。できればアンカー側に逆流防止の仕組みが欲しい。それに、小墜落実験では完璧に止まったが、大墜落で止まる保証はない。よって人にはお勧めできない。
 2ピッチ登ると広いバン

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2ピッチ目の途中

ドに出る。そこから垂直の壁なのでビビるが豊富なホールドに助けられ、数手登ると立派なペツル。その後は特段難しいところもないが、高度感満点。登り続けると、上の方に太い松の木が見えてくるが、ロープはそこまで伸びない。手前のリングボルト2本でピッチを切る。先行パーティが最後の頂上フェースを登っているのが見える。

 懸垂で下り、荷物をリュックに詰めて登り返すも、あと少しなのでそのまま必要量だけロープの確保を取り登る。松の木のさらに上の安定したところで確保を解除する。トポではそこからコンテとなっている。少し登ると馬の背のとりつきに出るが、左に巻道がついている。馬の背を登るかどうか迷ったが、すでに16時を回っている。トポにも巻道のことが書かれているので、それをたどる。馬の背のピナクルのコルに虎ロープで梯子がセットされている。掴んで登ると、頂上フェースの基部に出た。

 最も楽そうなカンテから凹角に回り込み少し登ると安定した松の木のテラスに出る。先行パーティは右のフェース状の

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2度めの地蔵岳頂上

厳しいルートを取っていたようだが(実にこれが核心部だった)、左に回り込んだらノーロープでも行けそうな岩場があり(実際一般登山道だった)、そこを登り切ったところに頂上があった。今日二度目の地蔵岳頂上だ。

 あとは一般道を3度目の下り。途中、「出合」の看板のところで、取りつきに向かう道を確認し、駐車場に着いたのは18時半。雪彦温泉を目指すが、すでに営業は終了していた。残念。
 なお、オレンジのヘルメットに心当たりの方、YCCのホームページから連絡されたし。20170513_012434734_iOS

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