明神岳東稜~主稜
アカンダナ駐車場発朝4時50分のバスに乗り込む。5時半上高地出発。明神小屋6時半出発

養魚場奥の木橋
明神橋を渡って、養魚場裏の木橋を渡り登っていくと、下宮川沢に出る(7時20分)。沢の向かいに印はなく、おやっと思われたがさらに数分登ると、左岸に印がある。
そこから派生している枝沢を登る。
しばらく登ると、だんだんガレてきて足元から崩れ、歩きにくい。
瓢箪池
ふと見ると、宮川のコルが下に見える。行き過ぎたかと思い、沢をはずれ右にトラバース気味に進むと、顕著な踏みあととマークがでてくる。それを忠実にたどると、瓢箪池に出た。(9時20分)
少々休んで、登攀具を身に着け、90度向きを変えて東稜に向かう。草が生い茂っているが、よく見ると明瞭な踏み跡がある。それを辿っていく。しばらく登ると、右にハーケン2本が撃ち込まれた壁がでてくる。その左の草付が登路になっている。
ここからが第一階段だろう。確保するほどでもないが、ロープが重いのでリュックから出し、ハーネスに着け、ひきずって登ることにする。
やばそうなところは何か所か出てくるが、落ちるほどでもない。しばらく登ると、摩擦のせいで、ロープが却って重くなる。
時折、引っ張り上げて足元にまとめてから登る。
それを何度か繰り返していると、ラクダのコルに出た。(12時20分)
ラクダのコル
コルの向う側に東稜のバットレスが聳え、その取り付きの両脇にそれぞれ雪渓が見える。右側の方が近い。ここに泊まるんだったら、水をそんなに持ち上げなくてもいいだろう。ただし、雪を取りに行くには、確保した方がよさそうだ。
持ってきたおにぎりを食べ、しばらく昼寝。曇っていて比較的涼しい。一度急に日が差して、カーっと暑くなった。13時に起床(?)し、取り付きに向かう。
13時20分、登攀開始。さすがに確保は必要だ。取り付きには古いボルトが一本あるのみなので、その右にハーケンを一本打つ。
荷物を整理袋に移し、ロープの一端を確保支点に固定する。もう一端の先に8の字結びを作り、そこからリュックに放り込んでいく。面倒臭いが丁寧にやらないと、いざというときロープを繰り出せなくなる。
いつも練習していたガルダーヒッチを使った確保がなかなかうまくセットできない。も少し練習すべきだったろう。
ガルダーヒッチを使った単独登はんのいいところは、頭が下になっても止まる(はずだ)し、ロープが張り過ぎていなければ、片手でロープが繰り出せることと、ロープでロープを押さえつけて止めるのではないこと、すなわちロープ同士をこすれあわせて止めるのではないことだ。それに、環付ビナ2個、通常のビナ2個、ロープのガイドとして懸垂でも使用するルベルソがあればよく、ソロイストやソロエイドなどと比べ、いつでも手に入るし、何より安い。
問題は、本当に落ちた時に止まるテストができていないことだ。一度やってみたいが、少々大がかりな設置をしなければならない。
バットレス取り付き
出だしは左の凹角気味の簡単な数メートル。その後、上の方に少々かぶり気味の難かしそうな、凹角。かぶった壁の下でエイリアンを使ってランニングビレイを取り、カンテから左の草付にトラバースして逃げる。草付をロープいっぱい登り、適当な岩で確保を取る。懸垂してよく見ると、ランニングを取ったエイリアンの下にハーケンがあった。
リュックに荷物を縛り付け、ロープマンを使って登り返す。確保点までもどり、上をみると、ずっと草付で確保なしで登れそうだ。
登攀中は決して確保を解いてはならない・・・大昔、新人のころ口を酸っぱくして教えられたルールが単独では通用しない。時には、多少のリスクをとってフリーで登らなければならない。
ハーケンべた打ちのスラブ
しばらく登ると、ハーケンべた打ちのスラブが出てくる。再び確保を取る。特にむつかしいところもない。これを登り切り、ロープを整理していると、携帯が鳴ったのに気付いた。しまった、電源を切り忘れていたか。と取り出すと、ひょうたん池では圏外だったのに、ここではLINEで、後輩の女性が無事出産したことを伝えてくれている。おめでとうと返信して、今こんなことしてます-と、写真を撮って送る。日常と非日常の混ざった妙な気分だが、話し相手のいない世界で、心が温かくなる。
再びノービレイで登る。明神岳頂上直下は、左に巻き気味に登る。と、稜線に出た。荷物を置いて頂上に到達。(15時40分)
明神岳頂上から徳沢園を望む
ここから前穂までは極めて厳しそうに見えるが、道は明瞭に見える。実際どーなんだろう。
頂上はテント一張り分の整地がしてあって、ここに泊まることも考えたが、先ほどから遠くに雷鳴が聞こえていたので避けることにする。Ⅱ峰は目の前だ。コルは風が強いかと思われたが、飛騨側にちょっとずれただけでほとんど風はない。若干整地し、Ⅱ峰の取り付きとⅠ峰の登りはじめにエイリアンをセットし、ロープを通してツェルトを張る。こんなことなら、ツェルトポールは要らなかった。
夕方ごろまでは温かかったが、次第に冷えてくる。軽量化のため、シュラフカバーと羽毛ジャケットしかないので、お湯をペットボトルに詰め、ソックスに入れて湯たんぽにし、寒さをしのぐが、冷えてくるとまた目が覚める。ペットボトルの水を温めなおし、寝る。それを何度か繰り返すうちにようやく朝になった。
ⅠⅡのコルのツェルト
Ⅱ峰の登り
二日目、5時40分登はん開始。Ⅱ峰は正面を直登かと思われたが、これまでの記録をみると、左の方を登っているようだ。例によって確保を取り、登る。出だしはオヤッと思われたが、特にむつかしいところもなく、また、カムを使うこともなく、残置ピンで支点を取り、短い1ピッチ目を終える。登り返すと、確保点にアブが大量にたかっている。それを払い除けながら2ピッチ目を登る。ここは1ピッチ目よりもっと易しくて短い。多分、Ⅱ峰は1ピッチで登れると思う。
登攀終了は6時50分。Ⅱ峰の信州側の少し下に出たのでリュックを置き、Ⅱ峰頂上に。懸垂支点にたくさんのスリングがかかっている。ちょっと飛騨側に降りると、岳沢ヒュッテが見える。
ここで、荷物を整理し、リュックに詰め込んで下降に入る。Ⅲ峰は右に巻く。時折、道がわからなくなる。
Ⅲ峰を過ぎ、Ⅳ峰に向かう途中、右足を置いたところに段差があり、バランスを崩しそうになって足を捻った。その瞬間グキっと足が鳴って、しまった!と思った。幸いひどい捻挫ではなさそうで、とりあえずテーピングしておく。
Ⅳ峰は頂上を超えていく。ここまでは峰が連なっている感じ。Ⅴ峰はだいぶ下に見える。そこから南西尾根が伸びているのがわかる。
Ⅴ峰頂上のピッケル
Ⅴ峰頂上には8時20分着。ピッケルが立てられていた。
最後の南西尾根の下降は、トレーニング不足が災いして、膝が諤々しはじめ、思うように捗らない。昔はこの程度ならスタスタ降りれたのに、と悔やんでも始まらない。幸い、右足首の捻挫はあまり影響ない。やっとの思いで岳沢登山道に降り着く。11時過ぎ。しばらく休んで、上高地河童橋は11時50分着。
Ⅴ峰南西尾根取り付きの看板
補足:アカンダナ駐車場から上高地行のバスは往復2050円。アカンダナ駐車場は、この時期、朝4時から入ることができ、午後6時に閉まる。この時期を過ぎると、もっと早く閉まる。車中泊等は禁止。それに加え高速を夜中12時前に出るのも阿保らしい(夜間割引が効かない)ので、今回は養老SAで仮眠、午前2時ごろ出発したがバス始発には十分間に合った。
平湯温泉付近のガソリンスタンドは関西圏の安いところより1リットルあたり10円以上高い。高速のそれはもっと高い。(比較:2015年8月8日現在関西の最安値は130円、平湯は140円超、高速は150円超) お世話になる平湯の経済の向上に資することを考えなければ、ガソリンの携行缶を持っていくのがベター。
装備:ロープ9mm50m。8mmの方が軽いので検討したが、これだと多分ガルダーでは滑ってしまい、止まらない。
小さめのエイリアン2個、薄刃ハーケン3枚、ナッツ2個を持って行ったが、確保用にハーケン1枚、ナッツ1個、前進用にエイリアン1個使用(それもよく見れば手前に残置支点があったので不要だった)のみ。ツェルト張用にエイリアン2個使用。
水は3.5リットルで、飲み物は節約気味だが間に合った。
ツェルトのポールは使わなかった。
行動食は、行動中はほとんど食べなかった。
飲み物:スープ一杯飲んだ。ガレーうどん用の乾燥出汁(近所のスーパーで98円+消費税)でカレーライスにした。(安いが味はイマイチ)
翌朝のラーメンはラ王にしたが、液体スープだったので失敗。スープの出汁は半分でいいので、残りの半分の液体はごみ。荷物にしかならない。今回は水もないのでスープにもできない。紅茶は翌朝一杯300CCほど。小さいペットボトルに入れたグラニュー糖をたっぷり入れて飲んだ。
テーピングテープは役に立った。これまでも何かあった時に役立っている。必携。
カメラはもっといいのがほしい。
今回合羽は使わなかった。
ヘルメットはベルトが耳に当たり痛くなる。
マットを持って行ったので快適だったが、リュック代用でもよかったと思う。
追記:下山後、アカンダナ駐車場から平湯バスターミナルに行く途中、左側に平
湯民族館というところがあり、風呂にはいれる。風呂は露天風呂が一つあるだけで、石鹸などはおいていないが、スタッフがいるわけでもなく、寄付として300円ほど入れるように指示があるだけである。
民族館の方にはスタッフ(館長?)が一人いて、食事もできる。休憩は無料。とても雰囲気のよいところだった。夜は9時まで入浴可能とのこと。東京方面からでも錫杖に行くことがあれば、寄ってみてはいかが。(槍見温泉の無料温泉もいいけど)